幼稚園で泣き続けた長男と、掃除のおばさんのひと言
子どもたちが幼稚園に通い始めた頃のことを、ふとよく思い出す。
いつかちゃんと言葉にして残しておきたいと思っていたので、ここに置いておく。
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3人の息子、それぞれの「泣いた期間」
まずは結論から。
幼稚園が始まってから、どれくらい泣いていたか。
- 長男:2ヶ月
- 次男:0日
- 三男:1ヶ月
三男は、やっと最近になって泣かなくなった。
登園前は、いまだに少し悲しそうな顔をすることもあるけれど、それでも泣かなくなっただけでほっとしている。
次男はもっと極端で、初日から一度も振り返らずに教室に消えていった。
性格が大雑把で、友達もすぐできるタイプだ。
問題は、長男だった。
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長男が幼稚園に行き始めた頃、俺はほとんどノイローゼのような状態になっていた。
マレーシア移住を本気で後悔したのは、あの時が最初で最後だと思う。
頼れる人が誰もいない。
日本にいれば、母に助けてもらえたかもしれない。
でもここでは、それができない。
ほぼ専業で子どもたちを見ていたのもあって、
幼稚園で毎日泣かれ、
帰ってきてからも泣かれ、
そのたびに、
「自分の子育ては間違っていたんじゃないか」
「俺は役に立たない父親なんじゃないか」
そんな考えに追い詰められていた。
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あの頃は、まだコロナ前だったので、親が教室の中まで入ることができた。
だからしばらくの間、俺は教室の片隅に座り、長男の隣で一緒におもちゃで遊んでいた。
授業が始まる少し前まで一緒にいて、先生に促されて教室を出る。
そのときの長男の、泣きそうな顔は今でも覚えている。
「大丈夫よ」と先生に言われて、俺は半ば逃げるようにその場を離れた。
そんな日々が、しばらく続いた。
最初の数日は、夜もろくに眠れなかった。
自分が情けない気がして、頭の中がぐるぐるしていた。
正直に言えば、日本に逃げたかった。
日本に帰れば、母がいて、言葉も通じて、どうにかなる気がした。
あの時ほど、自分を追い込んだことはなかったと思う。
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そんなとき、俺を救ってくれた人がいる。
俺のアパートで働いている、掃除のおばさんだ。
すごく気さくで優しい人で、
このアパートに引っ越してきた頃から、家族ぐるみで仲良くしてもらっている。
長男の登園が始まって、2日目か3日目くらいだったと思う。
たまたま会ったときに、思い切って相談してみた。
「子どもが泣いて大変なんだ。
頼れる人もいないし、すごく孤独で...
正直、初めてマレーシアに来たことを後悔した。」
そんな愚痴を、素直にそのまま話した。
するとそのおばさんは、笑いながら、さらっとこう言った。
「そんなの当たり前だよ。
うちの孫たちだって、みんなそうだったよ。
そんなに気にしちゃダメ。みんな同じ。」
たったそれだけの言葉だった。
でも、そのひと言に、本当に救われた。
「みんな同じ」という、ごくありふれた言葉。
それだけなのに、肩に乗っていた重さが少し軽くなった。
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長男が泣かなくなるまで、結局2ヶ月くらいかかった。
その間、あのおばさんを見かけるたびに、
幼稚園の様子や、長男のこと、自分の気持ちを話した。
すごい肩書のある人でもない。
何かの専門家でもない。
どこにでもいる、普通のおばさん。
でも、その普通の人の何気ない言葉が、
あの時の俺にとっては、誰よりも効いた。
偉い人とか、成功している人の言葉だけが
人生を変えるわけじゃない。
どこにでもいる人の、
さりげない一言に救われることもある。
2018年6月に、今のアパートへ引っ越した(執筆時2026年2月)。
あれから何年も経つけれど、そのおばさんは今も元気に働いている。
